レポート(3/4)

おやつ 〜倒錯エンターテイメント〜

おやつタイムの一番バッターは、「はぐれ雲一座」のお芝居『桃太郎』。お客さんの量が圧倒的に多くなって後ろの人は大丈夫だろうか?と心配しているさなか、ものすごい雄叫びが鳴り響き芝居は始まった。村芝居のような雰囲気のハイテンションな役者たちが演じるのはたんなる桃太郎じゃなくて、かぐや姫も海幸彦や山幸彦も、仏教的なエッセンスも、芸能人の物まねもすべて練り込まれて駄洒落やギャグの栄養になって不思議なノリを生み出していた。
おとぎの国から帰ってみたら、外山恒一氏によるトークライブが始まる。彼が今の街宣車スタイルの活動をどうやって始めたか、など、様々な法の網の目をステップ踏んですり抜けながら、芸能と言えるほどのエンターテイメント性にまで高まる政治活動の話を聞き、客席の熱気も増していく一方だ。
ふたたび山中カメラが帰って来た。おやつのカメラは一人合唱。カメラ片手に不思議な言動と歌、意味不明な手拍子の要求に客席の困惑は深まるばかり。とことん深まった困惑が、後半で次々に裏返って、何分か前の自分の困惑顔と共に合唱が立ち上がって行く。「落ち」のところでついて行けた人、行けない人、共々心地よい混乱につつまれた。
おやつのトリは関東で演劇活動をしているカモメマシーン。モニターが二つ設置されたり、作業をしている最中にいきなり一人の役者が舞台上に現れたかと思ったらだだっ子のように大声で怒り悲しんでいる。「なんでだよ」と。プロジェクターで公園の柵を撮影した動画が流れている。だだっ子がひとしきり暴れたり大声を出したりしている最中に、さきほど設置などしていた男が出てきて彼女を養生テープで羽交い締めにする。そのような行為をミニマルに繰り返す中で、「なんでだ」の声、その声を出す体は徐々に変わってくる。届かない声。届かないけれど発せずにはいられない声が見る物の奥に突き刺さってくる。